shadow_pmcのブログ (旧 ビートルズ徒然草)

ビートルズのレコードの重箱の隅を突っつくブログです。

US盤 THE BEATLES(WHITE ALBUM) ジョージ ハリスン 回収マスター使用の激レア盤の評価は?

1968年発売、ビートルズのUS盤ホワイトアルバムTHE BEATLES SWBO-101)にはジョージハリスンがダメ出ししたマスターを使用した”回収盤”が間違って世に出てしまった激レア盤があることが知られています。
これはアンソロジー本にも書かれているような「アメリカ滞在中のジョージがたまたまキャピトルレコード社へ立ち寄って聞いたホワイトアルバムの音が気に食わずマスタリングをやり直しさせた」というのがが話の発端です。
キャピトルレコードはそれまでカッティングしてきたラッカー盤を廃棄、新たに切り直したラッカー盤のマトが34というわけですから、ジョージがNGを出したマスターは33以下のマトを持つレコードというわけです。

ジョージがNGを出した理由がコンプが効きすぎた音がという事から"Compressed Master Version”と呼ばれるマトが33以下のレアプレスは数年に1度、eBayオークション等で市場に出ます。最近ではこの4月に40万円ほどで落札されるなど、かなりの高値を呼んでいます。

よく発見される(もしくは現存する)マトは2種類。ひとつは1面=B28、2面=B29、3面=A28、4面=B29のセット。

これらの画像はeBayサイトから引用しました。

もうひとつは1面=A9、2面=A11で3面と4面はマトが34以降の1枚目のみが対象のセット。

で、肝心の音の違いはどうなのか?
後者のA9/A11盤はレコードコレクターズ誌2018年12月号で紙ジャケ探検隊さんのレポートがあります。B28/B29/A28/B29盤は先のeBayオークションの出品者でありビートルズ研究の権威であるPerry Coxの説明によると

「THE MIXES ON THIS ALBUM ARE EXACTLY THE SAME AS THE "CORRECTED" REMASTERED HARRISON VERSION WE ALL KNOW AND LOVE. IT IS THE MASTERING THAT IS DIFFERENT, THEREFORE THE DIFFERENCES ARE CONFINED TO THE VOLUME AND TO MY EARS, THE BRILLIANCE. APPARENTLY TWO OF THE BEST SONGS TO TEST THE DIFFERENCES ARE "HELTER SKELTER" AND "LONG LONG LONG" DUE TO THEIR RISE AND FALL IN VOLUME. 」

音量レベルと輝き(鮮度のことか?)が違い、特にヘルタースケルターとロングロングロングでよくわかるらしいです。

いずれにしても正規発売盤のほうがダイナミックさにおいて良い音のようで、あえて魅力に劣る希少盤を高額で入手する意味もないので、拙者が買うなら数万円までですね。このWHITE ALBUMだけではなく、US盤は本当にたくさんのラッカー盤(マト)、レーベル、ジャケットが組み合わせられてとんでもない状態。早々にUS盤をコレクションの対象から外したことは正解でした。

 

 

 

ビートルズ US盤シングル ピクチュアスリーヴが復刻される日は来ないのか?

UK盤と違ってUS盤や日本盤のシングル盤にはピクチュアスリーヴ(ジャケット、以下、PSと略します)が付いていました。

特にUSシングルのPSは初盤にしか付いていなくて、再発盤にはUK盤と同じように共通のカンパニースリーヴ(USはキャピトル)に差し代わりました。

このUSシングルのPS、味のあるデザインがが多いのでマニアの蒐集心を燻るのですが、前述のように初盤のみで綺麗なものが少なくフェイク(偽物)も多く、コレクター泣かせのアイテム。タイトルによって状態の良いものは数万円は軽くしてしまうシロモノです。特に「Can't Buy Me Love / You Can't Do That(5150)」は発売数そのものが少なく、とても高価な1枚です。デザインは「I Want To Hold Your Hand / I Saw Her Standing There(5112)」と同じなんですけどね。

今日は未だこれらPSの復刻版が発売されないのは残念、というお話。

同じように独自デザインジャケットで発売されたUS盤アルバムの方は、1980年代中頃まで再発され普通に入手できました。CD時代になっても紙ジャケ仕様で2004年にキャピトル・アルバムス Vol.1(64 BOX)、2006年にそのVol.2(65 BOX)そして2014年には「THE U.S. BOX(The U.S. Albums)」で復刻されています。

復刻されていない、と書いてきたUSシングルのPS、実は一部のPSは復刻されているんですね、プロモCDで。1994年にアメリカ上陸30周年記念で前述の「I Want To Hold Your Hand(DPRO-79319)、1997年に"Summer Of Love"30周年記念で「Strawberry Fields Forever / Penny Lane (DPRO-70876-12118-2-5)」「All You Need Is Love / Baby, You Are A Rich Man(DPRO-70876-12119-2-4)」そして「Hellow Goodbye / I Am The Walrus(DPRO-70876-12120-2-0)」の合計4枚です。

いちおう雰囲気は味わえますね。企画番号がSummer Of Loveの方が若い! もしかして10年前の1987年に企画されていて何らかの事情でお流れになったのかも、と想像してしまいます。

プロモなので希少盤。特に人気のあるSummer Of Loveの3枚はなかなか市場には出てきませんし精巧にできたフェイクがあるので注意が必要です。ちなみに「I Am The Walrus」はUS盤シングルのみに収録の別ミックスではなく通常のミックスです。残念!

 

 

 

 

 

 

 

 

ビートルズ UK盤レーベルガイド本 Richard Nollerの新刊 「Extended Play In The U.K.」

昨年3月にApcor Books And Record社から発刊されたUK盤シングルのレーベルガイド本「MADE IN THE U.K. 」に続き、早くもそのEP版の発刊が決まった。「Extended Play In The U.K. – A complete overview of The Beatles’ EPs manufactured in the U.K.」


こちらも500ページ、4300の図版という圧倒的なヴォリューム、500部の限定版。シングルやアルバムに比べてヴァリエーションが少ないEPというカテゴリーですが、「MADE IN THE U.K.」と同様に1970年以降のアナログレコードはもちろん、CDなどまで含めると膨大な情報量となりましょう。

気になるお値段は前作と同じ€65なので、日本のお店で買うと2万円近くになると思われます。なお出版元からダイレクトに買うならこちらから↓

https://www.apcor.net/product/book-extended-play-in-the-u-k/?mc_cid=5b4a24aa1d&mc_eid=2f821ee499

前作も買った拙者は当然、買います。

注目は個人的にその存在を疑問視している「The Beatles' Milion Sellers」(GEP8946)のリマークありで、タイトルが「BEATLES' GOLDEN DISCS」ではなく正しく「BEATLES' MILLION SELLERS」と修正になったレーベル。

ビートルズUK盤コンプリート・ガイド」改訂版 197ページより

さてこのレーベル、CGではない画像が「Extended Play In The U.K.」に登場するでしょうか?注目しています。

 

 

 

 

 

 

THE BEATLES 「SGT.PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」 オーストラリア 高音質盤 AUDIO.5

名盤の誉高いビートルズのサージェントペパーズですが、それ故に昔からさまざまな方法を駆使した特別に音の良いレコードをプレスして高音質盤として発売されてきました。そのすべてが限定盤で販売枚数、販売方法などが限定され、今となってはその希少性もありとんでも無い高値をよんでいるのはご存じのとおりです。

昨年その高音質盤の1枚、オーストラリア(AUS)盤のいわゆる「AUDIO.5」と呼ばれる超希少盤のマスターテープが大手オークションハウスに出品され100万円近くで落札されました。

これが高いか安いかは別として、落札したのがどうやらビートルズの有名ディーラーであり研究家のAndrew (PARLOGRAM主宰者)のようで、早速PARLOGRAMのYoutubeチャンネルで紹介されています。

Unboxing The Sgt. Pepper's Master Tape - A Genuine Beatles Holy Grail - YouTube

そもそもAUDIO.5のマスターテープはUKオリジナルのステレオマスターではなく、EMIがオリジナルの15ipsテープを30ips(78cm/sec)にコピーしたものです。日本でも「アビイロード」のプロユース盤リリースのために本家EMIから78cm/secテープを提供してもらった状況と似ていますね。

Juliens Auctionのサイトより

AUDIO.5はハーフスピードマスターなので、このテープとラッカーのカッティングスピードを共に半分に落としてして時間をかけてカッティングしたという事でしょう。わずか500枚弱しかプレスしなかったAUDIO.5、で、肝心の音質はどうなのか? サージェントペパーズの高音質盤にはUS盤ではMoble Fedilty社のMFSL盤とその上位盤のUHQL BOX盤(拙者が見た限りマトは同じ)、本家UK盤ではNimbus Super Cut盤、そしてこのAUS盤AUDIO.5。前3者がオリジナルマスター使用、後者が2ndジェネレーションマスター使用。これもPARLOGRAMのYoutubeチャンネルでAndrewが最も音がよいサージェントペパーズを探っています。

The Best Sounding Beatles Vinyl Ever? | 1983 Australian AUDIO 5 Sgt Pepper's - YouTube

彼はこのAUDIO.5こそ最高の1枚と評価しています。

拙者はUK盤オリジナルも含めてすべて聴いたことがあります。Hi-Fiな音(ワイドレンジ、ダイナミックレンジも広い)的には一聴してNimbusに軍配があがりました。しかしHi-Fiな音と良い音は違います。音の好みも人それぞれ。再生環境や音量によっても異なります。なにせ超希少盤でとても全てをコレクションできませんので、これらを一堂に聴き比べるイベントなどあれば楽しいでしょうね。

なおこのテープはのちのAUS通常盤やレッドヴィニール盤(PCSO-7027)にも使用されているようですが、マトリクスが異なり、リカット(通常カッティング?)したラッカー盤を使用しているので残念ながら同じ音は味わえません。

 

ポール・マッカートニー 「バンド・オン・ザ・ラン」発売50周年

ビートルズのソロ作品はコレクション対象ではないのですが、ポールは「VENUS AND MARS」までと「FLOWERS IN THE DIRT」が好きで、「BAND ON THE RUN」は何枚か持っています

アナログレコードは、UKオリジナル盤のマト1とマト3。それと再発盤で発売25周年企画の2枚組。あとどこかにEMI100周年の記念盤もあるはず。

UK盤マト1(YEX-929-1)は「ラウドカット」との誤情報で有名なな1枚。誤情報を流した某音楽ライター本人が数年後にその間違いを認めたことは古いマニアなら有名な話。未だに本盤をラウドカットを売りに販売する店やディーラーもいますが、名カッターのChris Blairがカッティングしたマト3(EYEX-3)と比べても極端に「でかい音」とは思えません。UK盤らしい深みのある落ち着き払った音ならマト1、元気でバランスの良い音が好みならマト3。一説には輸出仕様とも言われているマト3、市場に出回る数こちらの方が少ない感じです。  

CDは何度も再発されているので、本当に多くのバリエーションがありますが、拙者所有は日本盤は再発帯付きが2枚、1989年発売のゴールドCDそしてアナログと同25周年企画の2枚組。変わったところで1996年発売のUS製DTSマルチチャンネルCD。このCDは1曲目の頭が欠けているらしい。こんな不良品が普通に発売されているのは流石アメリカ。あと以前記事にした2010年のハイレゾ音源がありますが、マニアの皆さんならお持ちのアイテムばかりです。

さてこの50周年となる2023年。もう特別企画リリースがないのかと思っていたら先日、「BAND ON THE RUN」50周年企画盤の発売が発表されました。ミキシング過程の音源をプラスした2枚組とのこと。これはぜひともアナログ盤で欲しいところでしたが、驚くのはその価格。オフィシャルストア限定でなんと2枚組LPが14,000円!。しかもすでに売り切れ。もうどうなっているのやら。

 

 

 

ビートルズ 28年ぶりの新曲 「ナウ アンド ゼン」

前回、ビートルズの新曲「Now And Then」が出る気配もない、と書いたところ、それから10日も経たず電撃発売。驚きました。その新曲と赤盤・青盤2023年盤のリリースラッシュもようやく落ち着いた感じですね。

前回の新曲「Free As A Bird」が発売されたのが28年前の1995年。ビートルズが解散して25年経っての新曲でした。もともとテレビ用の映像ドキュメンタリー「アンソロジープロジェクト」の一環で、アメリカのABCテレビがその権利をアップルから大金で買いとったので情報統制も厳格(今もそうですが)で、新曲「Free As A Bird」が日本で初めてオンエアーされたのが、ABCテレビが「アンソロジー」を放映した直後の11月20日頃のの久米宏司会の「ニュースステーション」でした。当時は25年ぶりの新曲ということで、拙者も同じ趣味の友人関係もかなり盛り上がっていました。

解散後の新曲3部作

で、今回の最後の新曲「Now And Then」ですが、残念ながら前回の100分の1も盛り上がらない、というか醒めていました。

前回は本当にどんなすごい曲が新曲として発表させるのか、ものすごい期待感がありました。なんせあのビートルズの新曲なんですから。しかし今回は前回のボツ曲の再挑戦であり、曲づくりの手法も予想ができたので曲としての期待感がありませんでした。

そして最近目に余る、あきらかにマニアの足元を見た一人に何枚も買わせる、煽り商法・限定盤商法。

最後に価格。シングル盤1枚が2,500円とか3,000円なんて。前ならLPレコードが買える価格ですよね〜。「Free As A Bird」は輸入盤で580円でした。いつも「お値段以上」だったビートルズ」も昔のお話に。

チャート1位獲得だそうですが、ビートルズ愛がある人を本当に喜ばせようとしているとは思えませんなー、ユニバーサルさん。


結局、今回は普通の黒盤シングルCDシングルで終わり。

EMI 100周年記念プロモCD とThe Beatles 「Free As A Bird」

 ビートルズの新曲「Now And Then」がこの秋に発売とのアナウンスがあってから久しい。同時に赤盤・青盤のリミックス盤も噂されていたのに、10月も終わろうとしている今でもリリースの気配がありません。

前回、ビートルズの新曲が発表されたのが1995年の「Free As A Bird」でしたね。今回は1997年に英国EMI社が設立100周年を記念して配布したプロモCDとその「Free As A Bird」の話です。

1997年に設立100周年を迎えた英国EMI社は、その記念プロジェクトとして過去のカタログをアナログレコードで再発しましたが、これはその時に配布された宣伝用プロモCD(CDCNTDJ1)です。

ジャケットも凝った作りの観音開きです。

これは2枚組で1枚目が24曲、2枚目が21曲。この100年にEMIから発売された名曲が並びます。各曲は発売順に収録され、1枚目は古のクラシック、ジャズやムード音楽のスタンダード曲が続き、拙者が知っている曲やアーティストではNat King ColeMona Lisa」が21曲目、Frank Sinatra「Three Coins In The Fountain」が最終24曲目に入っています。

続いての2枚目は打って変わってロック色が全開。いきなり1曲目にGene Vincent「Be-Bop-A-Lula」、そして3曲目にThe Beatles「She Loves You」、5曲目にThe Beach Boys「のGood Vibrations」という具合。さらにJohn LennonPink FloydQueen、The Sex PistolsPaul McCartney & Wings、Kate Bushと続き、最後は1997年のYour Woman「White Town」という曲で終わります。

このプロジェクトのメインのアナログレコード再発は全45タイトル。「EMI 100 - The Vinyl Collection」としてLPCENTのカタログ番号、ダイレクトメタルマスター仕様で180gの重量盤が売り。ジャケットに「EMI100」のステッカー付。残念ながらビートルズは1枚もなく、ソロ関係でJohn Lennon「 Rock 'N' Roll」と「Imagine」、Paul McCartney & Wings「 Band On The Run」の3枚。またDavid Bowie「 The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Mars」などプロモCDに含まれないアーティストの作品もあります。

さてその約30年前のビートルズの新曲「Free As A Bird」。この曲のエンディングでウクレレを弾いているのはジョージ・ハリスンとの事。

このプロモCDを聞いていて気づいたのですが、
1枚目の16曲目、George Formby「Leaning On A Lamp Post」のエンディングのフレーズがそのウクレレとそっくりなんです。

www.youtube.com

2分50秒くらいから一度聞いてみてください。